よく晴れた日曜日

何時に起きたのだったか忘れたが、目を覚ますとカーテンの隙間からまばゆい光が差し込んでいた。カーテンを開けると、そこそこの面積の光が部屋の中に落ちた。台風一過の朝だった。

視界をよどませていた塵や埃は全て雨粒と一緒に流されていったようで、浄化された9月の透明な空気だけがそこに残った。寝床から窓を見上げると、マンションとマンションの隙間に濃い青が見えた。

天高く、馬肥ゆる秋。

 

あまりにもよく晴れていたので、たまには井の頭公園を散歩しようかな、と思った。久しぶりに一眼レフを引っ張り出してきて、念のためバッテリーを充電した。化粧が終わる頃には充電は終わっていたが、近年の鬱っぽさがあとになって追いかけてきて、「どうせ撮るものもない」というような諦念めいた何かが湧きおこったので、そのまま置いてきてしまった。代わりに、少しずつ読んでいる『三体』の単行本を鞄に仕舞い、家を出た。

 

日曜日の吉祥寺駅周辺は、それはもう混んでいた。休日にこの駅に出てくると若干後悔する。街の規模がさして大きくないのに、人が多すぎるのだ。都心の方は全体的に空間を大きく使っているので、人が増えてもあまり窮屈な感じはしない。商業ビルも多く道幅も広いため、人の収容量はあちらの方が圧倒的に上だ。

都心の方の街づくりを東京ドームとするなら、この町はちんまりとした、よくある公会堂だ。それなのに(それだから)、休日には中央線、井の頭線の吉祥寺を起点とする前後5駅くらいの「休日にはのんびりした街を歩きたい」タイプの人員を抱え込んでいるような気がする。とにかく混雑して仕方がない。

 

とりあえず駅裏のマルイのthe 3rd Burgerでクレソンバーガーをテイクアウトし、いい匂いのするビニール袋を携えて、脇の小道を南に下った。公園に着いてからいつもの自販機で乳酸菌系ドリンクを買い、井の頭池の外周を歩きながら座れる場所を探す。藤の木の下のベンチが半分空いていたので、とりあえずそこに落ち着いた。

 

クレソンバーガーはとても美味しかった。一口食べるごとに噛み切れなかったクレソンをずるずると引っ張り出さなければならなかったが、味はとてもよかった。3rdBurgerは、マルイにできてからずっとわたしのお気に入りだ。パティからはしっかりと肉の味がするし、トマトソースも酸味と甘みと塩気のバランスが取れている。一時期バンズが頼りない白パンになってがっかりしていたが、いつのまにかそれも戻っていた。一番シンプルなハンバーガーは190円で、お財布にも優しい。

 
 
 
 
 
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ハンバーガーと乳酸菌ドリンクを飲んで席を立ち、再び外周の小道に戻った。公園も人だらけでうっとおしいので、イヤホンを耳に突っ込んで気を紛らせながら歩いた。

 

弁財天をショートカットするように対岸にかかっている橋を歩いて、時折立ち止まり、ぼうっと池を眺めていた。台風が残していったゆるやかな風が池の水面を撫で、波紋をつくっている。池にはたくさんの藻が繁殖し、水際を小さな青いトンボが飛び回っていた。恐らくイトトンボの類だろう。彼らは台風の間、どこにいて、何をしていたのだろうか。

 

https://m.youtube.com/watch?v=e7YGszbh9bQ

 

池の水は透明で、こんなに綺麗なら一眼を持ってくればよかったとやや後悔した。帰りに新宿のジュエリーショップの店員さんに言われた「瑞々しい色が似合う」という言葉を思い出して、あざやかな青のドライフラワーを買った。

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とりあえず一眼は充電済みなので、近いうちに何か撮りに行きたいと思った。